一章

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「なんだ、これは」  しかし入っていたのは、厚めの茶封筒だった。A4サイズほどの。  表にはご丁寧にここの住所と僕の名前が書いてある印刷物が張ってあり、裏を返しても送り主の情報は特にない。中身は何かプラスチックのようなものが入っているのか、封筒越しに硬い感触が伝わってくる。全体的に謎だった。  開けて中身を取り出してみると……ゲームソフトの、ディスクケース? 「なんだこれは」  同じ言葉が二度も口をついて出てしまう。本当になんだこれは。  しかし『クロノファンタジー』と題されたそのゲームソフトには、見覚えがあった。というよりもともとは自分のものだ。人に貸したものが返ってきたーーそれもこんな形で。怪訝に思ったが不可思議な点はもう一つある。  封筒の奥底に、隅に挟まるようにして何か小さなものが入っていた。逆さにして取り出してみると、それは手の平に転がった。  僕は目を瞠った。驚きを通り越して声もしばらく出なかった。 「……あの夢、お告げかなんかだったのか?」  手の平に乗ったそれは、薄ピンク色の一枚の貝殻だった。夢の中で『彼女』が持っていた貝殻に酷似している。  ひっくり返すとその貝殻の裏側に、送り主の名前が書いてあった。     
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