一章

7/7
前へ
/76ページ
次へ
「こういうところは相変わらずか」  この現象の原因は容易に想像がついた。取り出したディスクを一時的に別のケースに入れて置いて、そのまま忘れてしまったのだろう。  ついでに言えば、見知らぬメモリーカードも収められていた。その白いメモリーカードもまたケースに入れたまま送ってしまったようだ。あのルーズすぎる先輩がいかにもやりそうな事だった。 「まったく、仕方のない……」  面倒なこと極まりないが、僕は今日の予定を変更せざるをえなくなった。  半年前はいつだってそうだった。春日井美玉に振り回され、予期せぬ方向にずっと転がされていた。そして半年後の今でさえそれは変わらないらしい。彼女はもう転校してしまったので、どこで何をやっているのかは知らないが。  とりあえず、今日はまずこのディスクを持ち主のところへ返しに行かなければならない。見当はついているので単純なクエストではあるが、持ち主が持ち主なだけに酷く憂鬱な気分になる。すぐに済ませてその足で本屋へ向かうとしよう。  ーーだがこの時、僕は失念していた。  ゲーム内での単純なクエストは、時に大事件にまで発展するということを。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加