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 風花が、闇夜に白く煌めいた。  外気の冷たさに、耳鳴りがする。  ムゲンは夜空に冴え冴えと輝く十六夜の月を見上げて白い息を吐き、隣に立つ少女に目を移した。  ……我が姫、レンカ様は今夜も美しい。  ムゲンの一つに束ねた長く灰色の髪とは違い、高く結い上げ桜の髪飾りで止めた艶やかな黒髪には霜が舞い降り、月明かりで煌めいている。雛人形のように整った、幼く可愛らしい面には、寒さの為か薄く赤味が差していた。  戦いやすい、袂の短い着物と伊賀袴。着物の下には、獣の皮をなめして仕立てた着込みをつけているが、ぴったりと肌に張り付いたそれは豊かな胸の膨らみを一段と際立てる。  刀を携え、このような場所に居るべきでは無い方だと思った。  色とりどりの花々に囲まれ、金糸銀糸を織り込んだ美しい着物をまとい、琴を奏でる姿こそ相応しい。 「来るぞ、ムゲン」  ぱきり、と、凍り付いた枝が弾ける音でムゲンは我に返った。  眼前に広がる黒い山の裂け目奧から地を這うように、おぞましい霊気が這い上がってきた。ムゲンとレンカ、二人は木々が疎らで戦うのに都合が良い場所を選び待機する。枝の爆ぜる音は、霊気が強くなるにつれて激しく鳴った。     
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