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絶望感に打ちのめされ、せめて自害しようと手にした懐刀も易々と取り上げられてしまった。
「手練れとはいえ、家臣共を斬るのは造作もありませんでした。唯一、苦戦を強いられる可能性があったクヨウは、ご覧の有様です。先代の御館様も、クヨウなど助けずに御自身が生き残っておれば姫の為に戦えたでしょう……どちらにせよ、私が殺しますがね!」
楽しそうに笑いながらムゲンは、亡骸のごとく地に伏したレンカを抱き上げようと身を屈めた。
刹那、差し伸べられたムゲンの左腕が、肩から落ちた。
「レンカは、渡さない。ムゲン、お前は俺が斬る」
幻聴か?
霞の掛かった思考で重い頭を持ち上げたレンカの目に、刀を構え立つ血塗れのクヨウの姿があった。
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