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 暗闇の中から、一頭の大熊が飛び出した。  素早く二人は左右に避ける。すると大熊の後から、幽鬼のように五つの人影が現れた。  青白い光を纏う、武者袴の男達。鼻の位置に二つ穴が空いた、のっぺりとした顔面に異様なほど大きな目と口。肩よりも長くのびた白髪。 「オォオオォオ!」  五体の幽鬼が、同時に雄叫びを上げた。大きな口が破裂音と共に裂け、血の色をした長い舌が、だらりと垂れ下がる。 「討つ!」  レンカの掛け声と同時に抜刀したムゲンは、素早い流れで二体の幽鬼の首を落とした。レンカも一体を斃し、残る二体に刀を構える。  勝機は見えた、容易い。  余裕から警戒が緩んだムゲンの背に、戦慄。  新たに現れた二体の幽鬼が、鋭く長い爪を奮い襲いかかってきたのだ。革の着込みを嫌い、代わりに着物の上に羽織った外套が無残に裂けた。  油断した。  敵は残り四体。想定外に分の悪い戦闘状況だが、レンカ様には掠り傷も負わせるわけにはいかない。着物の下、生暖かな血の流れを感じながらムゲンは気を引き締める。  それにしても、おかしい。  十六夜の晩に現れる鬼は通常、多くて三体。何故、今夜に限って七体も現れたのか? 「深手か?」     
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