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【5】
「クヨウ! 生きて……?」
クヨウは切っ先をムゲンに向けたまま、レンカを助け起こした。
「許せよ、レンカ。早く助けてやりたかったけど、ムゲンは強い。完全に油断するまで、動けなかったんだ」
左腕の無いムゲンは右手だけで器用に刀を鞘から抜いて構えると、口元を歪める。
「貴様、なぜ生きている? 臓腑を撒き散らすほど深く胴を払ったはず。だが傷が……まさか!」
何かを悟り、狼狽えるムゲンをクヨウが笑った。
「幽鬼の動きを止めるには、首を落とすか心臓を断つしかない。しかし、それでも完全に殺す事は出来ない。復活を阻む事が出来るのは、日の光だけ。急所さえ逃れれば、人にとっては致命傷でも鬼は癒えてしまうと知っているだろう? そう……俺はもう、人間では無い」
一ヶ月前、任務時に別行動を取ったクヨウは、レンカとムゲンから離れた場所で一体の幽鬼と遭遇し、殺さずに捉えておいたのだ。
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