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「お前と互角に戦い勝つために俺は、人間を捨てるしか無かった。幽鬼に噛まれれば自らも鬼になる。鬼になった俺は女を囲い遊び人の振りをしながら部屋に引き籠もり、日の光を避けて、お前が正体を現すのを待ったのさ。女には可哀想な事をしたが、地獄で詫びる事にするよ」
「ほぅ……最初から俺を疑っていたのか?」
「お前を疑っていたのは、御館様だ。御館様は俺を逃がす際にムゲンに気をつけろと言った。その言葉に疑問を持った俺は、御館様が何を調べていたか突き止め、引き継いだ。御館様は、出会い茶屋や遊郭で行方不明になった女達を調べていた。そして、見え隠れするお前の存在に気が付いたんだ」
「さすが、御館様が目を掛けた逸材。さもなくば、レンカ姫の許婚になどしないと思ったわ! あの夜、貴様には毒を盛ったが生きて帰るとはな!」
言い捨てざま、ムゲンは大きく踏み込みクヨウの首めがけて刀身を振り切った。紙一重で避けながらクヨウは身を屈め、腕の無いムゲンの左に回り込む。両手に構えた刀に渾身の力を込め胴を払うも、浅い。
瞬時に身を翻したムゲンが打ち下ろす刀身を鐔で受けた。
人の身であれば力も素早さも敵わない所だが、鬼化した身体なら勝てる。
じりじりと鍔迫り合いしている間に、幽鬼と化したかつての使用人がレンカに襲いかかった。
「レンカ! 戦え! 足手纏いと言ったのは嘘だ、お前は強い!」
クヨウの呼びかけで、レンカは刀を手に取った。
躊躇う事無く幽鬼を斬り払い、クヨウの元に駆け付ける。
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