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「レンカ、お前をムゲンに近付けたくなかったから……」
無言で頷き、ムゲンの背後に回ったレンカは太刀を捨て脇差しを抜いた。レンカの意図を察したクヨウは、柄を握る手を僅かに滑らせムゲンの太刀から逃れると、一足に後方に退く。
前後同時に斬り掛かる、と、予測させ動いたのはレンカが先だった。ムゲンはレンカなど相手にせず、大振りの太刀をクヨウに振り上げる。だが、その身体が大きく仰け反った。
「……っ!」
ムゲンの背、心臓の位置に深々と突き刺さった脇差し。
刀身の刃を上向きにし、槍の如く投げられた脇差しが見事急所を突いたのだ。
隙を逃さずクヨウはムゲンの片足を払う。背から地に沈んだムゲンの胸に、重みで刀が突き抜けた。
「御免!」
クヨウの刀身が、ようやく顔を出した月に煌めく。
鈍い音と共に、ムゲンの首が、宙に舞った。
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