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【6】
風花が、闇夜に白く煌めいた。
朝日と共に幽鬼は霧散するが、夜明けまではまだ時間がある。庭の残骸をレンカに見張らせ、他の幽鬼が出現していないか『地獄釜』まで確かめに行ったクヨウが戻ると、二人は身を寄せ合って月を眺めた。
「日の下で最後に会った朝、酷い事を言った。謝るよ」
謝罪に首を振るレンカを見つめ、クヨウは寂しく微笑んだ。
「あの朝日は、これから鬼になろうとしている俺が見た、最後の光だった。人を捨てれば、お前と添い遂げる事は出来ない。でも俺が、お前を守るには、この方法しか思い付かなかった。ムゲンは朝夕の日光に耐えられる上に強い。策を巡らせ油断させる為にも、お前に嫌われた方が良かったんだ。本当は俺一人でムゲンを斃し、嫌われたまま姿を消すつもりだった」
「このまま、日の光を避けながら一緒にいる事は出来ないのか?」
すがるようなレンカの眼差しに、クヨウは目を伏せる。
「無理を言うな、出来るわけが無いだろう? あと数刻で日が昇る。霊山の登頂に光が差す前に俺は、闇に紛れ姿を隠さなければならない」
「行くな……頼む……。ううん、お願い……一緒に、いて欲しいの……私……」
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