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敵を牽制しながら、レンカはムゲンとの間を詰めた。声音に不安の色。
「お気遣い、無用にございます」
応えながら霜柱に浮いた落ち葉を足で払い、硬い地を蹴った。
下から刀身を払い上げ、翻す勢いで袈裟懸け。二体が胸から寸断され、四方に飛び散る。しかし、背に負った傷は、続く所作を鈍らせた。
ムゲン相手では分が悪いと学んだ二体が、同時にレンカに襲いかかる。
加勢が間に合わない。寸刻、凌いでくれと願いつつ、体勢を整えたとき。
「オレの嫁さんに、傷をつけるんじゃねぇ!」
一条の閃光がレンカの姿を煌めかせた瞬間、一体の幽鬼が沈む。期を逃さず、最後の一体をムゲンが斃した。
「クヨウ……貴様! 今まで、どこに居たっ!」
「あぁーうん、他に敵が出現してないか見回りしてたら迷っちゃってさぁ。遅れて悪ぃな! でも最後は、ちゃんと働いたから怒るなよ?」
クヨウは頭を掻きながら、無邪気に笑った。
今は亡き御館様が決めた、レンカ姫の許婚。後ろ髪は長く伸ばし一つに束ねているが、総髪のムゲンと違い前髪は短く揃え前に下ろしている。十六歳という年に似合わず大人びて落ち着いているレンカに比べ、十八歳でありながらクヨウの、なんと幼く見える事か。
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