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序章
無人のボロ小屋の真ん中に、死体があった。
それも、人の死体だ。
目を反らすこともできず、小毬はただひたすらその死体をじっと見つめる。身体が震え、凍りついてしまったかのように動かなかった。こういうとき、どうすればいいのだろうか。発見者として、悲鳴をあげながら警察に駆けこむべきなのか。けれど悲鳴どころか、喉が引きつっただけで、声が喉にはりついて出てこない。
死体は成人男性のようだ。背は高いが痩せ型で、だらりと地面に垂れた髪は長く、染めているのだろう緑色をしている。死体は上下ともに黒い服を着ており、長袖長ズボンの暑苦しいものだ。
この季節においては、やや不自然ないでたちである。
そこまで考えて、疑問が湧いてきた。
(本当に、死体……?)
倒れている彼を死体だと思った一番の理由は、顔色の悪さだった。青や白を通り越して、皮下組織が見えてしまっている。肌が透明だといえばわかりやすいだろう。しかし、顔色が悪くなりすぎると本当にこうも透明になってしまうものだろうか。
落ち着け、と自分に言い聞かせて、小毬は自分の現状を認識することにした。
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