第三章 日々の暮らしと、『芳賀魔巌二』

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「はっきり言ってよ。私が来なきゃこんなことにはならなかったって。何もかも私が悪いの! 豪理さんだって言ってたよ。私が死ねばそれで丸く収まったって!」 「豪理は合理主義者なんだ。やや感情が欠落しているが、悪いやつではない。すぐに感情的になる百合子と足して二で割ればちょうどいい……ああ、いや。そんな話ではなく。私は小毬を悪いとは思わない。実際、先の集会で小毬を悪く言う者はいなかった」 「……嘘」 「嘘ではない。皆が山口を責め、ヒトに対して怒った」  ぎゅう、と唇を噛んだ。血が滲み、鉄の味が口の中に広がる。トワは微笑み、小毬の頭を撫でた。 「小毬、お前が自分を責める必要はない。だから、他者のことは考えずに、自分の望みだけで決めろ」  え、と目を瞬く。 「なにを決めるの」 「このままここへ残るか、それとも――本土へ帰るか」 「なに、それ」 「ここに残れば、小毬は我ら新人種の仲間として認められるだろう。ただし、新人種の先は暗い。殲滅されれば、小毬、お前もともに死ぬことになる。……だが、もし本土へ帰るのならば、私が船で本土まで送ってやろう」  小毬はぐっと顔をあげ、トワを見つめる。  トワのぎょろりとした目も、小毬を真っ直ぐに見つめてきた。     
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