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「ふふふっ、誠次じゃないか。こんなところで何をしてるんだい?」
ふいに名を呼ばれて、振り返る。
研究施設方面から歩いてくる青年がいた。名前は、芳賀麻紅三郎。長い髪を頭上で一つに結び、両手の手首にはしゃらしゃらと音がなるほどに多くの腕輪をつけている。指先には真っ赤なマニキュアが艶やかに輝いていた。
世間一般では美しい、いや、絶世の美男子という容姿に入る容貌をしている……らしい。どこか妖艶でもあり、整い過ぎた顔立ちは気味が悪くもある、と誠次は思う。
「芳賀魔研究所長が、こんなところで何をしてるんだ」
「ちょっとソッチ側に用事でね。それで?」
「何が」
「例の彼女は見つかったかい? きみの姪っこの義姉、だっけ。ややこしいなぁ」
姪である未来は、内陸にある樹塚町という辺鄙な場所で暮らしている。両親が他界し、誠次も仕事柄彼女を引き取れないために、誠次や未来の母親が生まれ育ったという地域にある児童養護施設に入っていた。
その未来が、実の姉のように慕っている少女がいる。
名は、霧島小毬。
誠次自身、何度も顔を合わせており、言葉も交わしたことがある。
その小毬が、一年ほど前に新人種にさらわれた。ちょうど夏休みを目前とした、真夏だったころのように思う。
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