第九章 正義と、確固たる悪

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 飯嶋の部屋の窓からは、明かりが漏れていた。壁をよじ登り、窓から飯嶋の執務室を覗き込む。  老齢の男が、窓に背を向けて背もたれつきの椅子に座っている。執務机に肘をつき、書類を読んでいるようだ。ほかには誰もいない。 (こいつが、飯嶋)  新人種殲滅作戦の決行を決定した、新人種関連の最高責任者。  そう思うと怒りで目の前がくらくらして、歯を食いしばった。居てもたってもいられず、窓を割って飯嶋の執務室へ侵入する。飯嶋が何事かと振り返ると同時に後ろから羽交い絞めにして、彼の首を掴んだ。喉仏が手のひらのしたで上下するのがわかった。  コンコン、とドアを叩く音がした。 「閣下、何かございましたでしょうか」  男の声だ。小毬は飯嶋の耳元で、「なんでもないと言え。それから、人払いをしろ」と命じる。 「なんでもないよ。これから来客が来るんだ。聞かれたくない話をするから、きみたちはもう休んでいいよ」  飯嶋が、ドアに向かって声を張り上げる。 「はっ、しかし見張りの仕事は――」 「いいってば。誰に狙われるわけでもないし。さ、帰った帰った」 「……はい、では失礼致します」  ドアの外で、足音が離れていく。人の気配も消え、小毬は胸中で安堵の息をついた。 「で。きみは誰で、私になんの用かな」 「お前を殺しにきた」     
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