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小毬が飯嶋の傍にしゃがんだ瞬間、飯嶋の頭が後ろへ反れた。額には、焼け跡のような丸い銃痕。折れてしまうんじゃないかと思うほどに後ろに反れた首が、飯嶋の身体を伴って床に倒れ込んだ。
あっという間に血が絨毯を濡らし、血溜まりが出来ていく。
紅三郎に撃たれたのだ、ととっさに理解した。理解したが、頭がついていかない。ここで暮らしているのなら、紅三郎とて元帥である飯嶋の部下ではないのか。
「どうして」
「んー、人質とか面倒だったし? ああ、心配はいらないよ。閣下を殺したのは、キミだってことにしておくから。そしたらキミは殺人者だ。どこにも逃げられない。ワタシが研究材料にしてあげるよ」
そう告げると、紅三郎は肩を揺らした。
「ふ、あはっ、あはははははははっ!」
「……何がおかしいの」
「ワタシはね、トワが死ぬなんて思ってなかった。彼は『特別』だから。正直、トワの死体を見たときは焦ったよ。でも、うん。そういうことか。どういう仕組みか気になるなぁ。キミ、トワから『特別な力』を受け継いだんでしょ? ヒトと新人種は別の生き物だから交配もできない。なのに、キミは今、ヒトでありながら新人種に近い力がある」
紅三郎の視線が割れた窓へ向く。
「ここは三階だよ」と言って、にんまりと笑った。
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