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「『特別な新人種』だったトワが、キミに与えたんじゃないの? その力を。トワは特別だった。監査で飛龍島へ行ったとき――ほら、誠次と一緒に――あのとき、トワを見て気づいたんだ。ワタシは彼を知っている、と」
(このヒトは、おかしい)
たった今、その手でヒトを殺しておいて、何をのうのうと語っているのか。常識というものが欠落しているとしか思えない。
頭のなかで警鐘が鳴っていた。
(関わっては駄目だ。危険だ、この人は)
以前にも思ったことだが、今尚改めて確信する。眉をひそめた小毬を見ても尚、紅三郎は話を続けた。
「六十年前にもさ、トワを見たことがあるんだ。あの姿で、そして同じ名前で。それって完全に同一人物だと思うんだよねぇ。あ、私の記憶力は凄まじいものだから、疑わなくていいよ。つまり、何が言いたいかというと。トワは不老だった。あの姿でずっと、この六十年、彼は飛龍島で生きてたんだ」
「六十年前?」
確かにトワは六十歳以上だと言っていたけれど。
紅三郎の全身を見渡して、小毬はさらに眉をひそめる。
「あなた、六十年も生きてるの?」
「そう。まだワタシが、芳賀魔巌二としてこの研究所にいたころの話だよ」
芳賀魔巌二。
確か、飛龍島の住民を使って人体実験をした末に、新人種へ変貌させた、張本人。
(不老不死の研究をしてたっていう、あの芳賀魔巌二?)
小毬は首を横に振る。
「馬鹿を言わないで。芳賀魔巌二はもう」
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