第九章 正義と、確固たる悪

17/21

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
「そのために、キミの身体が必要だ。隅々まで研究してあげるよ。キミの身体がどうなってるか気になるところだ。交配実験もしたいなぁ。あ、そうだ。ワタシの子を産ませてあげてもいいよ。新人種に近いキミとヒトであるワタシの子は、きっといい研究材料になる。大丈夫、キミを殺しはしない。だから、大人しくしていて」  紅三郎はにやりと笑い、引き金を引いた。小毬はしゃがむことでかろうじて避けたが二発目は交わせなかった。肩に弾丸を撃ち込まれ、痛みに悶絶する。肩が焼けているような熱を感じて歯を食いしばった。食いしばった歯の間から唾液がこぼれ、ぽたぽたと汗のように絨毯を汚す。  さらに、紅三郎が引き金を引こうとした、そのとき。  鎖に繋がれた少年が、紅三郎に体当たりした。紅三郎はつんのめるようにして床に倒れ、その上に少年が乗り上げる。紅三郎は慌てた素振りも見せずに、冷静に少年に対して発砲した。 「――っ」  少年は身体を九の字に曲げた。 紅三郎は続けざまにもう一発撃とうとする。 (駄目だ!)  小毬は、気づけば飛び出していた。紅三郎の拳銃を蹴りあげる。彼の手から離れた拳銃は絨毯のうえで大きく跳ねると、壁際まで転がっていった。  小毬は少年の前に回り込み、紅三郎の首を両手で掴んだ。     
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加