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「これ、外してくれてありがとう。これで俺も、皆のところへ逝ける」
少年はそう言って、自分の首を掴んだ。彼の親指が首にめりこみ、真っ赤な血が流れ出す。鮮血が少年の手を伝ってこぼれ落ちる前に、小毬は本能的に動いていた。
少年の腕を引き、彼の肩に手を置く。
「駄目」
少年は驚いた顔をして、まじまじと小毬を見つめた。
「死ぬなんて駄目」
「俺たちの誇りを侮辱するのか」
「死ぬことが誇りだと思えない。死ねばもう、何もかも終わりなんだよ」
みしり、と音がした。それが少年の肩から自分の手を伝って聞こえた音だと知り、慌てて手を放す。少年は軽く眉をひそめて、自らの肩を撫でた。
「ねぇ、生きようよ」
小毬は少年に、彼の命に、縋るように告げる。
「お願いだから。もう、誰も死んでほしくないの」
飛龍島で自害しただろう、仲間たちを思い出していた。最後に見た豪理の後ろ姿、崖から飛び降りた百合子。
彼らは死に誇りを持っていた。それもまた一つの道であり、彼らの価値観でもある。理解はできる。けれど、納得はできない。
死ねばそこで終わってしまう。
悦びも悲しみも、何も感じることができなくなるのだ。
少年はしばらく呆然と小毬を見つめていたが、やがてぽつぽつと口をひらいた。
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