第二章 飛龍島

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第二章 飛龍島

 自分の目で海を見るのは初めてだった。  テレビの画面で見る海は「ただそこにある」といった具合に無感動だったが、生まれて初めてみる海は思いのほか大きく、どこまでも続く青い水平線に目を奪われてしまう。  もっと近くで見ようと乗り出した小毬の腕を、青年が引っ張った。 「落ちるぞ」  足元は岩壁になっていた。  三メートルほどの高さだが、崖が反り返った形になっているため落ちれば海の藻屑と化してしまうかもしれない。  小毬と青年は、海沿いに生い茂る深い森林のなかにいた。左右数十メートルに渡って海沿いに緑が広がり、さらにその向こうには小さな砂浜がある。小毬が想像していた白と青の砂浜ではなく緑と茶色の藻のようなものが砂にこびりついた場所だが、砂浜であることに違いはないだろう。 砂浜より遥か遠くへ視線を向ければ、山間に伸びる道路が僅かに見えた。道路の先には道の駅があり、つい先ほどそこで食料を買い込んでここへたどり着いたばかりだった。  小毬が振り返ると、青年はどさりと地面に腰を下ろした。 「疲れた、少し寝る」 「うん。走っては休んでの繰り返しでここまで来たもんね」  青年の瞼が下り、翡翠色の瞳が見えなくなった。     
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