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その日、この小さな天桜村では雨の中粛々と葬儀が執り行われていた。
亡くなったのは西山大翔11歳。
多くの参列者が幼くして亡くなってしまった大翔を想い悲しみに暮れる中、
式場の外でただ一人呆然と雨に濡れながら式場を見つめる少女がいた。
「・・・・・。」
少女の名は佐倉風花、亡くなった大翔の幼馴染で常にといっても過言でもない程に
共に過ごし互いが互いを想い合い、なくてはならない存在だった。
突然の事故だったそうだ。風花の下に第一報が届いたのは一昨日のこと。
嘘だと願った、そんな筈はないと。受け入れられない気持ちに風花は涙さえ出なかった。
しかし、その事実を〔嘘だと〕確かめるために風花はここまで来た。
無論、そこにあったのは非情なまでの現実。
名前も何度も見た、大翔のお母さんもいた。お父さんもいた。そして、遺体も見た。
もう自分を誤魔化すことはできなかった。
風花の世界は、この日・・・完全に壊れた。
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