新年のご挨拶

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女子社員達は小宮の周りに集まっている。小宮はマーケティング部への異動が決まっているので、それまでに近づいておきたい……なんて思ってるんだろう。部長がバツイチ子持ちって分かる前までは部長の周りにずっといたのに……なんて考えごとをしながら歩いているとドンッと人にぶつかってしまう。 「す、すみません」 慌てて周りをみたが、人の波にのまれてしまい、小宮や部長達は少し先に行ってしまっていてはぐれてしまったみたいだ。 何とか追いつこうと隙間を縫って進もうとするが、なかなか進まない。仕方ないから後で合流しようとしたら、俺の手を誰かが掴んだ。 「ーーーー!?」 怖くなり手を引っ込めたが、まだ手は俺の方に向かってくる。嫌な記憶が蘇り身体が竦んで動けなくなりそうだ…… 「景都!」 人の波を掻き分けて戻って来てくれる部長の姿を見て思わず手を伸ばす。 「(ひさし)さん!」 向こうが伸ばしてくれた手と触れ合いギュッと握る。何度か前に進む人にぶつかりながらも俺たちはお互いの距離を縮めた。 「全く……急にいなくなったから心配したよ」 「すみません。ちょっと考え事してしまって」 「もう、私の元から離れないでくれ」 そう言って握った手に指を絡ませる。周りの人の目が一瞬気になったが、小宮達社員はもうかなり前に進んでしまいっているようで気づいていない…しかもこんな混雑していて手元なんて見ている人なんて誰もいない。 俺はそのまま俺と部長は手を握り合ったまま進んでいった。     
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