第二章

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家に帰ると一人だった。母さんが作ったご飯を温めて食べて、勉強するだけ。机に向かって一時間くらい経った頃だった。集中力がきれて強ばった身体を伸ばす。スマホが目に止まった。あの日からアプリを開いていない。しかし、あのアプリは世間での流行りとかイベントとか情報を得るのに便利だった。 アプリを起動して設定から「新しいアカウントの作成」をタップする。もう自分のアカウントは見たくない。全く誰にも知られていない、誰かもわからないアカウントを作る。 その時、テレビからニュースの音が流れてきた。 『先日埼玉県で高校一年生の男子が自宅で死んでいるところを発見されました。警察は自殺の線で調査を行っています』 自殺。 子供の自殺は相次ぎ、定期的にニュースになっていた。出来心だった。 死にたい そう検索すれば沢山の呟きが出てきた。 『もうやだ。死にたい』 『死にたいから怖いから誰か一緒に死にませんか』 『死にたい人#集団自殺』 思ったより多くて驚いた。数分前に呟かれたものもある。同じ、なのかな。この人達も僕みたいに学校で浮いてて、苦しんでるんだろうか。仲間がいるんだ。そんなくだらない仲間意識に少しだけ気持ちが軽くなってスマホを閉じた。  死ぬってどういう感覚だろう。  ふとした時に考えるようになったのはいつからだろう。脳裏に彼らの声が染みつき、貧乏ゆすりの音が離れなくなった。 「秋に行く修学旅行の班をくじで決める」  先生の言葉にくじを引く。  神様は味方なんてしてくれなかった。目の前で菅野君が舌打ちする。  菅野君の大袈裟なため息が響く。 「緑川、班長お前やって」 「え、でも」
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