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第一章 シオン宮殿
「皆様、ご覧いただけますでしょうか。こちらがシオン国王のお住まいのシオン宮殿となります」
ニュースキャスターの浅瀬外間(あさせ はずま)は右手にマイクを携えつつ左腕を大きく伸ばした。その伸ばした左手の先には雪化粧に覆われた建造物があった。液晶パネル越しにこの光景を見る人々は、その言葉に誘われたのか、食い入るように身を乗り出した。初めて目にするその建造物が何なのかを自身の眼で確かめるべく。
テレビ局側もそのことを熟知しているのであろう、カメラの映し出す絵はキャスターから建造物へ、そして建造物に移って行った。聴衆が何をいつ欲するかを予め知っていたかの如く。
「シオン宮殿が我々一般人に公開されるのは、これが初めてになります。シオン宮殿はシオン国自身であります。つまり宮殿そのもの、宮殿の敷地それ自体が国家なのです。何故このような国家が存在するのか。その辺りのことはシオン国家研究家の笹川春彦教授の方から説明していただきたいと思います。それでは教授、よろしくお願い致します」
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