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「いらっしゃいませ」
麗華がバーの扉を開けると、お馴染みのバーテンダーがお馴染みの席に案内してくれた。もう既に半分出来上がっていたハヤトがカウンターの隅でひとりウイスキーを煽っていた。
「ツカサの奴、ナンバーツーのオレを嵌めて追い出しやがった。自分がランクアップするために・・・」
「よくある話ねえ、それでハヤトはどうするわけ、仕返しでもするつもり」
「なんか、麗華の顔見たら、そんな気も失せたわ。それも大人気ないなって思えて来た。オレも今年で二十四だし。そろそろ、ホストの足を洗う時期じゃないかって気もして来た」
「そうね、それもいいかも・・・」
「でもさ、オレ、高校中退でこの世界に入ったからね、学なし、コネなし、お金なし」
「ナンバーツーだったのでしょ。お金はあるでしょ、お金は。あたしもかなりあんたにドンペリつぎ込んでやったでしょ」
「先月亡くなった母親の手術費用で全て消えたさ。親も金も、身も心も・・・」
「初めて聞いたわ、そんな話、あんたも苦労しているのね」
「ホストの立場じゃ、こんな話出来ねえじゃないか」
「あなたも一端のプロなのね。あんたのプロ根性は分かった。いいわ、あたしの会社で雇ってあげる」
「雇ってもらえるのはありがたいが、イケメンだけが取り柄のオレに出来る仕事ってあるのか・・・」
「イケメンが役に立つのは何もホストに限ったことじゃないのよ」
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