第三章 ホストクラブ

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「いらっしゃいませ」  麗華がバーの扉を開けると、お馴染みのバーテンダーがお馴染みの席に案内してくれた。もう既に半分出来上がっていたハヤトがカウンターの隅でひとりウイスキーを煽っていた。 「ツカサの奴、ナンバーツーのオレを嵌めて追い出しやがった。自分がランクアップするために・・・」 「よくある話ねえ、それでハヤトはどうするわけ、仕返しでもするつもり」 「なんか、麗華の顔見たら、そんな気も失せたわ。それも大人気ないなって思えて来た。オレも今年で二十四だし。そろそろ、ホストの足を洗う時期じゃないかって気もして来た」 「そうね、それもいいかも・・・」 「でもさ、オレ、高校中退でこの世界に入ったからね、学なし、コネなし、お金なし」 「ナンバーツーだったのでしょ。お金はあるでしょ、お金は。あたしもかなりあんたにドンペリつぎ込んでやったでしょ」 「先月亡くなった母親の手術費用で全て消えたさ。親も金も、身も心も・・・」 「初めて聞いたわ、そんな話、あんたも苦労しているのね」 「ホストの立場じゃ、こんな話出来ねえじゃないか」 「あなたも一端のプロなのね。あんたのプロ根性は分かった。いいわ、あたしの会社で雇ってあげる」 「雇ってもらえるのはありがたいが、イケメンだけが取り柄のオレに出来る仕事ってあるのか・・・」 「イケメンが役に立つのは何もホストに限ったことじゃないのよ」
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