第一章 シオン宮殿

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 映像が見知らぬ初老の男性画像に切り替わった。 「ご紹介に預かりました笹川です。それでは私の方から簡単に説明させていただきます。皆様がご承知のように、この地はプロシア共和国連邦の領土内、それも中心部にあたります。それにも関わらず、これまでシオン国はプロシア共和国には加盟せず、独立国家として存続してきました。ご覧のように国家と言っても宮殿があるのみ。これまでの資料を紐解いても、この宮殿から武力行使が行われた記録はありません」 「先生、この神殿国家は紀元前からあると聞いています。人類は今日まで大量殺戮を伴った領土拡大の歴史を繰り返して来ました。この地が殺戮者の手から逃れたのには、何か特別な理由があるのでしょうか」 「バチカン市国とういうのをご存知かね」  笹川教授はキャスター浅瀬に顔を向けた。
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