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第二章 ゾンビの城
菱宮香(ひしみや かおる)は大きく開かれた壁際の窓から外を眺めていた。嵌め殺し窓でなかった。窓には取手が取り付けてあった。幸運なのか、それとも、故意的なのか、窓はこの時が来るのを待ち受けていたかのような様相をしていた。
香は期待に応じるべく、取手に手を掛けて一気に窓を開けた。肌寒い風が堰を切ったように部屋に雪崩れ込んだ。それでも香は屈せずに窓から身を乗り出して外の様子を伺った。窓の外には急勾配の屋根が広がり、屋根の裾野は大地に届かんばかりに伸びていた。
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