第二章 ゾンビの城

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 鉄製の扉の上半分はすりガラス。そのすりガラスには不気味に蠢く黒い影が映っていた。香たちはゾンビに追われて八畳程のこの小部屋に逃げ込んだのだった。ドアの外ではゾンビ達が体当たりを繰り替えしている。突破されるのも時間の問題であることは明白だった。 「他に選択肢はないのか、お前、オレと違って頭いいじゃないか。名門大学出身だろ。なんかさあ、オレには上手く言えないけど、大岡裁きみたいな三者三徳の方法ってないのかよ」 「ツアーガイドの八馬さん。ここの施設のことはあなたが一番詳しいでしょ。何か良い方法はありませんか」 「そうだ、こうなったのも、お前らの会社のせいだ。なんとかしろ」  隼人は八馬真治(はちま しんじ)に食って掛かった。 「そうおっしゃられましても、逃げる途中で携帯も彼らに奪われ、会社への連絡手段もございません」 「八馬さんの会社のせいかもしれないが、八馬さんのせいじゃないよ」 「あんたらは、選ばれし社会の勝ち組。社会の勝ち組は弱気者を踏み台にして勝ち上がって来たのだと思っていた。だから・・・」  隼人は香の弱者に対する以外な一面に触れて調子が狂っていた。
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