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「あれ、ガブリエルの野郎から言われてないのかい?」
「言われてませんが……お聞きしますがここは何処の国でしょうか?」
お店の看板を見ながら私は質問する。
『ロウチャ服屋店』と書かれたその看板は真新しく、まるで新品のような材質をしているのが目に見える。
「天界に国なんてないさ! 共通する言語も無い!」
「え? 私日本語喋ってますが……なんで通じるんですか?」
看板から視線を外し、ロウチャさんの姿に視線を移す。
「そりゃもちろん、国がないからさ」
お店のドアを開けながら、ロウチャさんは言う。
国がない? 国という一つ概念が無いのか、はたまた『天界』という一つの国なのか。
「この天界には、色々な国の人が死人としてやってくる。自分の住んでいた母国語を話すと、相手も自分の母国語を話してくれる。そんなもんだい」
「……すみません、意味が分からないです……」
「うーん……もっと簡単に言おうか」
ロウチャさんは椅子に腰掛け、私にも椅子に座るよう合図をしてくれる。
私が座ったその椅子はふかふかで、布団を用意してくれたら多分寝ることが出来るレベル。それくらいフカフカ。
「雅は日本人だろう? 日本人なら、話している言語ももちろん日本語だよね?」
「えぇ、そうです……」
「その日本語が、この天界に住んでいるほかの外国人には、その人の母国語を話しているように聞こえるってこと。言葉は通じるけど、言語は違う。こんな感じかな?」
ロウチャさんが言いたい答えはつまり、自分の母国語……私で例えると、日本語で天界にいるアメリカ人に話しかけたら、そのアメリカ人も日本語で話してくれる。
逆にそのアメリカ人の方は私に対して、そのアメリカ人にとって一番話しやすい言語の『英語』を話しているつもりになる、ということ。
だけど、私にとってその英語は日本語にしか聞こえないシステムになっているようだ。
…………なんだかややこしい。もっと簡潔にまとめたい! ここのシステムどうなってんのよ!?
「な、なるほど……では、天界出身の方はどこの言語を話しているのですか?」
「天界出身のヤツらは、主にギリシャ語。アタシはノアと同じ日本人だい」
「えっ日本人なのですか!?」
「そうよー? 姓名を聞いてビックリしちゃった! まさか日本人がって! あはは!」
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