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「……このデザイン、いいかも」
筆が進んだ。それから一言を言葉を発さずに、思い浮かんだデザインを忘れないように、手を動かした。
出来上がったのは十分後。あまりにも早いデザインの出来上がりで、私もロウチャさんも驚いていた。
「すっげぇ、こんなデザイン初めて見た! 作りがいがあるねぇ!」
ロウチャさんは、はしゃいでいた。
「それで、どうしてロウチャさんは服作りの役職に?」
ダダダダダダ、とミシンの音が室内に響く中、私は振る舞われたミルクティーを飲みながら質問をする。
「うーん……お母さんの影響かなぁ。お母さんが服作るの好きだったからさぁ、それを見ていて、将来はデザイナーになろう! とか、服を作る仕事に就こう! とか思ってたんだい」
「なるほど……」
「お姉ちゃんも得意だったよ。よくお人形さん作ってくれたのね。でもお姉ちゃんは学校の先生になりたかったんだって! だからお姉ちゃんは教育大学に、アタシはデザイナーの専門学校に進んだんだい」
「……なれたんですか?」
「なれたよ! 凄いブランドの会社に就職して、新服のデザインを頼まれるまでになったんだい!」
へぇ、すごい。ということは私よりも相当歳上か。
デザイナーか……将来の夢にもあったけど、結局は諦めたんだっけ。
「……でもな、就職して二年目の冬に、交通事故に巻き込まれて死んだんだい」
「交通事故……ですか」
「……ノア、アンタは日本にいた時に、京都市の交差点で巻き込み事故が二件連続であったのを知っているかい?」
「え? あ~……まぁ、はい。まだ小学生くらいだったかと思いますが……。ニュースで大きく取り上げられていましたよね。二件合わせて十人以上死んだっていう」
「そうそう! それにアタシとお姉ちゃんは別々の現場で巻き込まれて、同時に死んだんだい!」
「な、へ?」
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