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どうやら私の身元を調べていたようで、それらしき書類を手に持たされる。
「……あ、お父さんとお母さんの名前……」
『天道一葉』『天道龍二』の文字が見えた。
私の生前の住所、役職、名前、性別、生年月日など、色々なことが書かれている。
「……へぇ、お前ん家日本だったんだ」
「えぇ、どうして?」
「俺はフィンランドの軍人育ちだからさぁ。親もいないし、幸せとか家庭とか、そういうのはあまりわかんないからよ」
「へぇ……複雑な環境で育ったのね」
「そ。お前は幸せって知ってるか?」
「しらないよ」
「は?」
ウォルナットが素っ頓狂な声をあげた後、私は従業員に呼ばれる。
どうやら能力を調べるらしく、ついて行こうと従業員のその背中を追おうとした。
「おい」
「?」
ウォルナットに呼ばれ、足を止める。
「……この先の人生、気をつけろよ」
「? ……はい、分かりました」
あの人は、私の事情を分かっている様子だった。
だから気をつけろ、と言ったのだろう。
……この姿、誰かに似ているような。
……いいや、気のせいか。
なんておもいながら、私は従業員の後をついていった。
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