天界の端くれ

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「もしかしたら、天界に上がれば出るかもしれない……まぁ、いいや。なんか不安だし、僕がついて行こうではないか」 「え、いいんですか?」 「なんか不安だし……」 「不安なんですね……まぁ、私も不安ですし、ついてきてくれるとありがたいです」 「うんうん、良きかな良きかな……」  一本道をゆっくり歩いていくガブリエルさんに慌ててついていく。 「名簿を見たけども、君は高校生とか言うやつなんだって?」 「そうです。……というか、入学式の日に死んだからさぶっちゃけ言って高校生歴3時間位なんですよ」 「なるほどなるほど……地上の生活は、僕達には分からないけど……楽しいのかい?」 「楽しいって思えば、楽しいですかね。でも、中には貧しい人だっているからさ。誰しもが楽しいってわけじゃないと思う……思います」 「敬語は無しでいいよ~、僕堅苦しいの嫌いなんだ~」 「じゃあ……うん。ガブリエルは、天界出身なの?」 「そうだよ。まだまだ身分の低い方さ」 「へぇ……」  などと話しているうちに、私とガブリエルさんはエスカレーターの前へと辿り着く。  上を見上げれば見上げるほどその姿は小さくなり、飽きる程長いと思わせられるこのエスカレーターを上がるとなると、少し憂鬱に思えてくる。 「面倒くさそう……」 「うーんそうだなぁ……あ、いいこと思いついたや」  ガシッ。  効果音が聞こえそうな位の勢いで、脇を通して彼の腕に捕まえられる。 「持ってて」と名簿を渡される。 「せーのぉーっ」  受け取ったと同時に彼は構えている。  うそ、なにしてんの?  ブワッと風が吹くと同時に、さっきまでいた花畑が一気に遠のいていく。  え? なに、何が起こってんの? 「僕もちょっと、急いでるからね。君のことも、ちょっと言わなきゃならないし、ね」 「あ、飛んでるんですね、私を抱いて」 「そゆことー」  大きく広がる羽をみて、すぐに察せた。 「あ、お名前」 「へ?」 「お名前さ、ウリエルなんてどーよ」 「ウリエル!? それはユダヤの天使じゃ……!」 「いいんじゃない? キリストの天界には、ウリエルがいないのだから、丁度いいと思うんだ~」 「えぇ……じゃあ、もうそれでいいですよ……」 「わぁい! ウリエル、ウリエル~!」  飛びながら彼は喜んでいた。  この先にある結末がどうであれ、まずは案内人が優しい天使でよかったと思うよ……。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!