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ロウチャ
「着いたーっとぉ」
ガブリエルさんがゆっくりと着地して、私もゆっくりと降ろされる。
「ジェットコースターみたいで楽しかった……」
「そうなの? 怖がる人がほとんどだから、そう言われると嬉しいような、そうでも無いようなぁ……」
「そりゃあいきなり楽しかったなんて言われたら困るよね。うん、分かる。私も中学の後輩に『ノア先輩って顔がト○ロ見たいですね!』って言われたことがあって返す言葉が無かったわ」
「そもそもト○ロっていう存在を僕は知らないのだけれども……」
あ、そっか。天界って地上と違うもんね……知らなくて当然だよね……。
「あれ? ガブリエルじゃん。なんでここにいるんだい?」
ふと声が聞こえてくる。振り返ると、私よりもかなり背の高い女性の天使が、こちらを見つめてきている。
「……お、ロウチャか……ちょうど良かった、この子に新しい服を作ってあげておくれよ」
「服ー? まぁ、いいよ。大天使様の命令ならね」
「僕は命令で言ったつもりは無いんだけどなぁ……」
「あれ、そうなのかい? ま、細かいことは気にしないでおこうではないか!」
ロウチャと呼ばれたその女性は口を開けてけたたましい笑いを表現した。
うぉ、声がでかい。普段の話し方もだけど、特に笑い声がでかい。耳塞ぎたいけど失礼だからやめておこう……。
「紹介するよ。この天使はロウチャ。天界に来た人の服作りを担当しているんだ」
「よっろしくー! って……あれ? アンタ羽は?」
「あ、えと…………」
「無いんだよ。ここに来てから」
「へえ~、光輪はあるのに……珍しいこともあるもんだねぇ! ガブリエルはなんか知らんのかい?」
「ううん、僕も分からない。後で上の方には伝えておくよ。じゃないと、人間に間違われたらこの子も困るだろうし……。まぁ、光輪があるだけマシだよね。君も幸運だよ」
なるほど、私は幸運者なのか。
いやまぁ、間違えられても元人間ですって言えばいいだけなんだけどね。嫌なことになりそうだから控えてはおくけど、言ったらどうなるんだろうとかはやっぱり考えちゃうよね。
「まぁ、それは良しとして。おいで! アタシがアンタに似合う最高の服を作ってやるさ!」
「あ、はい!」
「じゃあ僕はちょっとだけ席を外すよ~。上の方に伝えてきたら、すぐに戻ってくるよ」
「うん、分かった。ありがとう、ガブリエルさん!」
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