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お礼を言うと、ガブリエルさんは私の肩に左手を置いて「ぐっどらっく!」と、残った右手で親指を立てながらキリッとした顔で言ったあと、羽を広げて飛ぶ体勢に入った。
あの時のようにぶわっと風が舞い、風圧に耐えられ無かった私は下に尻をつけてしまう。
気がついた時には、ガブリエルさんは更に奥の方へと行ってしまっていた。
あちこちがざわざわとしている。大天使がいきなり風を撒き散らして飛び立ったらまぁ当然そうなるよね。
「……改めて、アタシはロウチャ! 天界に来た死人の新しい服を作る役職を与えられているんだい!」
「ど、どうも……」
「地上のお名前はなんて言うんだいー? お姉さんに聞かせておくれよぉ」
「えっと……天道ノアです」
「天道! いい苗字だい、天使の天が入っているじゃないか!」
「あ、ありがとうございます……」
「それでそれで? 天界でのお名前はー?」
「えっと……ウリエルです」
「ウリエル!? あのユダヤのかい!?」
「は、はい……」
大層驚いてるなぁこの天使……
「こりゃアンタ偉大な名を付けられたねぇ!」と後に言葉を繋げたロウチャさんは更に驚いた表情をする。
……確かに、ユダヤのウリエルはすごい大天使だ。
ガブリエル、ミカエル、ラファエルに並ぶ、『神の御前につく大天使』として知られるのだから。
ウリエルは『ペテロの黙示録』でとても重要な役割を担う大天使。
『天のすべての光と地上の運行、気象、自然現象を司る天使』という特徴をもち、名前もヘブライ語で『神の光』『神の炎』という意味になる。
『地上の運行』……それは私の住んでいた人間界のことを指すのだろうか、はたまた天界も対象なのだろうか。
意外と謎多き存在、ウリエルについての知識を頭から掘り出していたら、よくよく考えるとすごい名前を付けられたものだ。
「さ、着いたよ!」
「おぉ……」
少し歩いて着いた先は、小さな一軒家。その姿は日本の建物と大きく違い、まるでローマ帝国にあるような洋風の家に近かった。
「すごい……日本とは大違いだ」
「そうだろうよ! ここはニホンじゃないからね!」
「へ?」
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