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性別のこと
『やめて……お願い……』
ここはどこだろうか。
草原の大地。雲が流れ、延々と広がるその景色は綺麗だと思わせる反面、一つのあるところによってその思いはかき消される。
『血』だ。何枚もの翼を持つ全身傷だらけの天使の女の子が、血を滴らせながら息を荒くして、緑の草原を赤く染めていく。
『…………ねぇ、僕達、兄妹でしょ? 僕だってこんなことしたくないんだよ。だから……戻って来てよ、ねぇ……』
ゆっくりと歩み寄るもう一つのシルエット。
それは同じく天使。
違うところと言えば、羽の数と性別だろう。女の子の天使の羽の枚数は……数えられるだけでも六枚。反して、もう一人の天使は二枚で、声からして性別は男の子だろう。
『まだそうやって、僕を裏切るの? そうやって、僕を陥れるの? ねぇ、返してよ。答えてよ、
イェレミエル』
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