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天界の端くれ
ぱちっと目が覚めた。
視界にまず入ったのは、綺麗な花畑。色は青色と統一されていて、奥に伸びる度に青々しく思える。
さて、ここは一体何処だろうか。
もしかして私、死んだ?
いや死んでるよね、確実に。トラックに撥ね飛ばされて生きてる方が余程気持ち悪いと感じてしまう。
「うーん、どうしたものか……」
花畑を裂くように伸びている一本道の向こうには、上に続いているエスカレーターのようなものがある。
ってことは、今いるここはどこかの下なんだ。なるほど。
「いや何処だよ!? どこかの下って分かってもさ、そのどこかが何処なのかが分からないとどうにもならないじゃん!?」
うがーっと一人で喚いていると、人一人分の足音が後ろから聞こえてくる。
振り返ると、そこには人……じゃない、誰だこいつ。
頭に輪っか、それでいて大きな羽…………。
あ、天使だ。
一発でわかった。
「お目覚めかなー?」
かなりゆっくりな口調で私に話しかけてきた、黒髪の天使。
真っ白な衣装に身を包んだその姿の、金色に輝く目には光がない。
「うん、お目覚めですが……」
「うんうん、良かった。ほんと、良かった。見つかった」
「はい? 見つかった?? それはどう言う─」
「それは、後で。まずはお名前ね」
どういう事なのかを聞こうとする前に言葉を遮られ、私は少しだけいじける。
状況を説明してくれないとわからないんですけど。頭が追いつかないんですけど。
「名前は、そうだなぁ……あれ?」
「うん?」
「君、羽ないの?」
「は? 当たり前でしょ、人間なんだから」
「人間ー? んんー??」
ずいっと顔を近づけてくるその天使に、私は思わず小さく声をあげて一歩分下がってしまう。
「……君、ここのこと分かってないね?」
「は?」
その声で、改めて辺りを見渡す。
人間の住む世界にこんな場所があってたまるかってお話だよね。
「ここは天界の端くれ。これから天使になる死人が辿り着く、希望の果て」
「天界の端くれ……じゃあ、あのエスカレーターは……」
「あれは天界に続くエスカレーター。君は地獄で閻魔さんに、天国行きって言い渡されたの。覚えてない?」
「全く身に覚えがございませんが……」
「そうかぁー……」
うーん、と考え込むその天使。
その手には、高級そうな名簿のようなものを持っている。
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