ノワール
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ノワール

思いがけずザシャルと和解した其の日の深夜── 「……」 今夜は新月のせいで月を見る事が出来ない。 ベッドから見える真っ暗な夜空にため息をついた。 「…眠れない」 ベッドに入ってからもう何十分過ぎただろう。 何故か今日に限って眠る事が出来ない。 こんな事は初めてだった。 今まではベッドに入れば5分と経たずに眠りに入っていた。 「……」 眠れない原因を私は知っているのかも知れない。 (多分…今日の出来事のせい) ザシャルに対して抱いた気持ちを感じたから。 でも… (でもこの気持ちは何なのかしら) 初めての感情で、其れがどういったものでどういう状況になると発動するのかも解らない。 「~~~あぁ…もう!」 胸に広がるモヤモヤとした感情が気持ち悪くて私は横になっていたベッドから起き上がった。 カチャ 真っ暗な室内を抜け、バルコニーへと続くドアを開き外に出た。 「んっ…寒い」 春の夜風は少しだけ体を冷やした。 真っ暗な夜空に春の星座が瞬いていた。 「…綺麗」 月は見えなかったけれど、キラキラと輝く無数の星の淡い白銀が夜空を淡く照らしていた。 (…なんだろう、とても心が落ち着く) 暗闇を心地いいだなんて感じるのは初めてだった。 こうやって夜中に起きて暗闇に身を置いた事がなかったので、これが初めて感じた闇の印象だった。 「眠れないのか」 「!!」 急に真横から聞こえた声に心臓が飛び出るほどに驚いた。 盛大に驚いたせいで手すりに置いていた手が滑り、前のめりになった。