もうひとつの本
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もうひとつの本

そしてあっという間に数日が経ち、フェルの誕生日を祝うパーティーに参加するために私はほぼ一年ぶりにフェルの家に来ていた。 「これは姫様、ようこそお出で下さいました」 「お久し振りです、レスフォルス卿」 「ははっ、どうか固い挨拶はなさらず。いつものようにドルガと気易くお呼びください」 「…じゃあ其のように」 フェルの父親であるドルガ=レスフォルスは外務大臣として長く国王や王家を支えて来た古豪の重臣だ。 城で見かける彼は大臣としての厳しい顔をしていたけれど、一旦国務から離れるととても穏やかで気持ちの優しい人で私はとてもよい印象を抱いていた。 「アーリァ、来てくれたのか!」 「フェル」 玄関ホールでドルガと話していると中央階段からフェルが声を掛けた。 そして元気よくバタバタと階段を駆け下りて来た。 「こら、フェルディナント。静かにしないか」 「痛っ!わ、悪い~~つい」 ドルガにガツンと拳を頭に落とされたフェルは少し涙目になった。 「もうフェルったら…誕生日まで怒られているの?」 「はっ!そうだった、今日はおれの誕生日じゃんか!拳はナシだぜ親父」 「おまえは…もう11にもなるというのにどうしてそんなに落ち着きがないのだ」 はぁとため息をつきながら項垂れたドルガが可笑しくてつい笑ってしまった。 「姫様、笑い事ではありませんぞ。折角行儀見習いも兼ねて騎士見習いとして城に奉公に出したというのに何も変わらず──」 「まぁ…まだ見習いになって日も浅いし、これからの成長を愉しみにしましょう」 「…姫様」 「そうそう、おれ、絶対強い騎士になるから!乞うご期待っ」 「~~~フェルディナントォォォ」 再び始まったドルガとフェルの掛け合いが面白くてもう何度目か解らない笑い声をあげた私だった。