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もう帰ろう。蝉の声が、やけに耳に付く。ひしめくように、自分を気づいてほしいかのように泣き続ける。額に汗がにじむ。夏は、まだまだ続きそうだ。カバンの本が、無性に重く感じた。やっとのことで、家に着いた。 家に着いても、あの図書館でのことが忘れられなかった。彼のぬくもりが今でも感じられるような気がした。俺、どうしちゃったんだろう。彼のことを意識しすぎている自分に気づき、変だなと思った。今までこんなに他人のことを考えたことはなかった。というより、他人に興味がなかったのかもしれない。遠くからみんなが仲良くしているのを見ると、いいなとは思うが、思うだけで誰かのことを必要以上に考えたことはなかったと思う。いや、考えなくなってしまったのかもしれない。今、彼のことを無性に考えている自分がよくわからなかった。考えることを辞め、借りた本に目を移す。簿記の歴史を読んでいく。少しすると、彼のことを考えている自分に気づく。俺は、本を読むのを辞めた。ふと携帯に目を移すと、グループラインの通知が来ていた。開くと、そこには、楽しそうにみんながバーベキューしている写真が映っていた。みんな予定が合わないみたいなことを言って いたのに。そう思っていると、写真が消えた。送り主が削除したみたいだ。削除しなくてもいいのに、そう思いながら、携帯の電源を切った。ベッドに横になり、天井を見ながら、また明日、図書館に行こうと思った。     
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