約束

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約束

翌日から僕は俄然やる気を出して、森下とふたりで動き回った。森下も小林と電話でやりとりしたようで、森下なりに思うことがいろいろあったようだ。 今までなかったサークルの名前も「シネマ食堂」とし(これは森下の発案だ)、イラストレーター志望の知り合いに頼んでポスターを作ったりもした。 そんなある日、学内のカフェで森下と時間をつぶしていた時、森下がふと呟いた。 「辰巳リサって可愛いよなあ」 僕はその予期せぬ一言にちょっとドキッとした。辰巳リサの名前を他人から聞いたのは初めてだったからだ。 「まあ、おまえは知らないだろうけど、ほら」 森下は読んでいた雑誌を僕に渡した。そこには注目の若手女優と称して何人か採りあげられ、その中にあの辰巳リサも載っていたんだ。 「ふうん、まあまあ可愛いじゃん」 とりあえず僕はそんなに興味はないふりをしたつもりだけど、その雑誌の辰巳リサは一緒に採り上げられてる他の女優さんにも引けを取らず、一段と輝きを増したようだった。 こんな素敵な女の子とあの新宿の交差点で出会い、再会し、一緒にパスタを食べたなんて、ほんとうに信じられない気分だった。
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