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「遅かったな堵夢(トム)、彼は何したんだっけ?」
「俺が調べ上げただけでも、自動車やバイクの窃盗が三十二件、お年寄りに対する詐欺十八件、老若男女問わず恐喝が五十件、きっとまだあるだろうな」堵夢は鼻で笑ってそう言った。
「おっ、おっ、俺がやったっていう証拠でもあんのかよ?」
「あるよ」堵夢はポケットからレコーダーを取り出すとそれを再生した。
―おい、兄ちゃん、有り金全部よこしな。
―えっ、勘弁してください。
―駄目だ。痛い目に遭いたくないだろう?この辺の奴らからざっと三十、いや五十人から有り金徴収してんだ。中には一生病院から出られない奴もいるんだろうな。さあ、どうする?
「まだ証拠はあるぜ。この声、あんただろ?」堵夢はレコーダーを止めてそう言った。
「いや、それは・・・」
「金持ってそうな学生何人かにレコーダー持たせておいたんだよ。警察なんてあてにしていたら、被害者は増えるばかりだからな。もう観念しなよ!」
「くっそ、ぶっ殺してやる!」
そう言うとチンピラの男はナイフをポケットから出してチラつかせた。
「あー、刃物出しちゃった・・・。響(ひびき)、これはもう完全にお仕置きだな」
堵夢は頭をボリボリかきながら響に視線を送った。
「ああ。刃物俺たちに向けたってことは、殺人未遂は確定ですよね。だったら今からは正当防衛ってことで」
「何でも良いさ!ガキには俺のナイフは防衛出来ねえぜっ!」
パンチパーマの男はそう叫ぶと刃物を響目がけて真っ直ぐ突き出した。
響は男の攻撃をかわし、そのままナイフを持った手を脇に抱え、柔道の体落としで地面に叩きつけた。そして次の瞬間、電撃音と共に二人の体が青白く点滅した。
“ババババババ”
「ぎゃぁぁぁぁぁー!」パンチパーマの男は叫んだ。
音と光が止むと、そこにはパンチがスーパーパンチになった男の姿と焦げ臭い臭いが辺りに漂っていた。
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