1人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜、帰宅すると、堵夢の姿がなく、デートのため遅くなると書かれたメモが書き置かれていた。
―そうか、堵夢のやつ、依頼を成功させて報酬でデートしてやがるのか・・・。堵夢のメモを丸めてゴミ箱に捨てると、響はシャワーを浴びてすぐに布団へ入った。眠りについてどれくらいがたったのかはわからないが、携帯電話に電話がかかってきたので、響はまどろみながら電話に応答した。
「響くん?」電話の声は輝海だった。息が荒く何かに怯えている様子だった。
「西川?どうした?」
「どうしよう、響くん。また、カンカンカンって金属音が聞こえる。しかもいつもより音が大きいよ」
「家に家族はいないのか?」
「うん、実は今日から2泊3日で温泉に行っちゃって・・・」
―まずいな・・・。
「すぐ行く!」響は慌てて家を飛び出した。ストーカーの諦めるという言葉に違和感を覚えていたにも関わらず、彼女のもとを離れたのは軽率だったと反省しても足りないくらいだが、今は一刻も早く彼女のもとに辿り着かねばという思いでいっぱいだった。
蒼野家特性の強化スーツを着用していないことに気付いたのは、西川の家のすぐ目の前で、西川の悲鳴が聞こえてきた時だった。
「キャー!」
響は慌てて西川の家に飛び込んだ。玄関のドアは開いておらず、一回の窓が割られていた。声は二階から聞こえる。響は階段を駆け上がり、その声が聞こえた部屋のドアを開けた。
ドアを開けた部屋の明かりは消えていて、部屋の中には月明りで照らされた西川と犯人の姿があった。西川は左腕から血を流し、それを抑えながらおびえていた。そして犯人は右手にナイフを持ち、息を荒げていた。
「ハアハア・・・また・・・ハアハア、お前か・・・ハアハア」
「おめえ、何やってんだよ!」俺は犯人に思い切り飛び蹴りを浴びせた。犯人は勢いよく窓ガラスを割り、外に落ちて行った。
最初のコメントを投稿しよう!