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「はい、カーット!ストーップー!」そう言うのは堵夢だった。
男が声の方向を見ると、キッチンの窓が開いていて、外から動画撮影をする響、そして暴力の全貌を傍観していた堵夢と日花里の姿があった。
「なっ、何だテメエら!何撮ってんだよ?」
「いやいや、義理の父親の暴力劇。撮らせて頂きました」
堵夢がそう言うと、男はすぐに駆け寄ってきて、証拠隠滅を図ろうとした。
「正当防衛!」日花里がそう叫びながら自分の中で絶賛大ブーム中の必殺技、後ろ回し蹴りを男の顔面に食らわせた。そして有無を言わさず「天誅(てんちゅう)!」と言いながら男に踵(かかと)落(お)としを脳天に喰らわせた。男は意識もうろうとしながら「てっ、てめえ」と呟いて頭に刺さった日花里の足を掴んだ。
そんな男の手を堵夢は日花里の足首から外し、ズルッと男の体を持ち上げた。
「あんた、なんでこんなことするんだ?」
「・・・うるせえ・・・・ガキに話すことなんてねえ」
「うるせえではなくて、女子供に暴力振るってその理由がうるさいからなんてないだろ。聞いてやる。言えよ」
「イラつくんだよ・・・。チッ。俺の子でもないのに何で面倒見なきゃならない。こっちは養ってやるってんだ。俺の言う通りにするのが筋(すじ)だろ」
「筋、ではないな・・・。いいか、まず、碧ちゃんに罪はない。全くだ。そして碧ちゃんは無力だ。そんな子供に暴力をふるうっていうのは重罪だろ。それに碧ちゃんのお母さんにも暴力ふるっていたよな。女性に暴力って絶対に駄目だろ。あんたの人格にも問題はあるかもしれないけれど、そもそもさ、あんたとお母さんとの間で子供や今後の話があまり出来ていないからこうなったんではないの?」
「くっ・・・」
「お母さんも、色々あるのかもしれないけれど、母親なんだから・・・。娘をしっかり守ってあげないと」
「はい・・・」母親は何度も頷きながら右手で口元を押さえ号泣していた。「ごめんね碧!」そう言って母親は娘を抱きしめた。
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