2.過ぎ去った日々。想い出まで抱きしめて。

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2.過ぎ去った日々。想い出まで抱きしめて。

五年前。   彼の名前は雷園寺(ライオンジ)響(ひびき)。 ジトジトとした真夏の湿気が去り、空気が乾燥する秋。 響は正に今、人生のどん底に落ちようとしている。 昨夜で重要な薬が切れたのだ。幼少期から用いているその薬は響の特異体質を抑える薬。 五歳の時にこの病気を発祥して以来、特に空気が乾燥する秋冬は薬無しでは外出、いや、生きることが難しい。 人に触れれば驚かれ嫌な顔をされる。 ドアノブ、椅子の金属の部分、車、正直数え切れないほど彼の前には困難が待ち受けている。そして冬は最も恐ろしく、孤独な季節。 薬無しでは正直生きてゆく自信が無い・・・・。
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