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「こいつは佐倉沙織。中学校からの知り合いで……西大寺とは中学校のとき同じクラスだったっけ?」
緊張して、うまく声が出ないけど、何とか振り絞って言う。
「こ、こんにちは。西大寺君」
そう言ったところで、私はフリーズしてしまった。そんな私を見て、彼は少し微笑む。
「こんにちは、佐倉さん。えっと、確か二組だっけ?」
「えっ、どうして私のクラスを?」
「えっと、長瀬君がさっき教えてくれてね」
横を見ると、ドヤ顔をした長瀬が私を見ている。
「そうなんだ。西大寺君は三組だっけ?」
「そうだね。これからもよろしく」
「うん、よろしく」
そんな初々しいような会話をしていると、視界に有紀の姿が目に入った。
「おっ、こんなところにいたんだ、さおりん」
「ごめん、有紀。探してた?」
「いーや、特には。おや、長瀬も一緒?」
「俺が一緒じゃマズイのかよ?」
「いやいや、そうは言っていませんよー」
「本当か? どうきいてもその口ぶりは邪魔者扱いだろー」
「おやおや、自分で邪魔者の自覚があるようですねー」
「おっ、言ってくれるねー。今日こそその口、きけないようにしてやろうか?」
「そう言って、もう何十回目かなー」
そんな夫婦漫才のような会話が繰り広げられているとき、西大寺君が声を掛けてきた。
「佐倉さん、もう部活動は決めた?」
「えっと、実は……まだ決めてなくて。中学では美術部だったんだけど……」
「そうなんだ。絵が描けるっていいね」
「そ、そんなことないよ」
頬を赤らめながら言う私。今の私、きっとゆでだこみたいに真っ赤なんだろうな。
そうだ、この機会に西大寺君に部活のことをきいてみよう。
「えっと、えっとね、西大寺君はもう部活動って決めたの?」
「そうだね……。中学の時はサッカー部だったけど、高校では何か新しいことを始めたいなって思ってて。それでさ、実は写真部に入ろうかなって」
「写真部? でも、なんで?」
「うーん、なんていうのかな。単純に興味っていうのもあるし、それに高校卒業しても趣味として続けられそうじゃない?」
笑いながら、話す西大寺君の横顔を見ながら、私は自分の気持ちを伝えるために、写真部に入部しようを心の中で強く決めたのだった。
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