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「おっ、佐倉じゃん。おはよう」
振り返ると、そこには見慣れた姿があった。
「なんだ、長瀬か。おはよう」
「なんだとはなんだよ。せっかく声かけてやったのに」
「それは、ありがとう」
このお調子者は長瀬春樹。こいつとも小学校からの付き合いで、いつもムードメーカー的な存在で、いわゆるスポーツ系男子って感じで、小さい頃からずっとサッカーを続けている。
「そういやさ、佐倉。知ってる?」
「知ってるって、何を?」
「西大寺のこと。あいつ学年でも成績上位だったじゃん。だから、てっきり秀明にでもいったのかと思ったのよ」
「思った……ってことは違うの?」
「そう、実はさ……ここの高校に進学したって話らしいんだ」
「えっ!」
私は思わず変な声を出してしまった。あの西大寺君が同じ学校にいる。
「でさ、今日もせっかくだから朝一緒に来ようと思ったんだけど、俺が寝坊しちゃってさ。あいつ、きっともう来てるんじゃないかな」
「そう……なんだ。へぇ……」
ドキドキした気持ちを抑えていると、有紀が戻ってきた。
「おまたせ、さおりん。どうにも私ってあーいうので探すのって苦手でさ」
「で、何組だったの?」
「もちろん、さおりんと同じ二組……って、いうか、なんで長瀬がいるのさ」
「おまえもかよ。冷たい反応だな」
「だって、長瀬のいいうわさってあんまり聞かないし」
「いやいや、俺だってやるときはやる男ですよ」
「どーだか。で、長瀬は何組なわけ?」
「よくぞきいてくれました。俺はお隣さんの三組です。ちなみに、西大寺も同じクラスですよ」
「えっ、西大寺って、あの西大寺?」
私と同じく有紀も驚いている。
「そう。あの学年上位で有名な西大寺君です」
「へぇー。よかったじゃん、さおりん」
急に話を振られて戸惑う。
「そ、そうだね。うん……」
「あれ? さおりん、顔赤いよ」
「そ、そんなことないって。それより、はやく教室に行こっ」
「はいはい、わかりました」
思わぬ形で、片想いの相手がいることを知ってしまった私。しかも、隣のクラスだなんて。ひょっとしてこれは神様がくれたチャンスなのかな?それとも単なる偶然なのかな?
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