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「最近夢と現実の狭間が、曖昧?」
私の怪訝そうな声に、神様はへにゃりと笑ってそうなんだあ、と力が入っていない声を出した。
洗濯物を畳んでいた手を止めて、神様の後ろから少し旧型のパソコンを覗きこんだ。
「この投書が、そうなの?」
「うん、微かだけど気配を確かに感じるんだ」
「……じゃあ、行くしかないよね」
「毎回そうだけど、胡羽ちゃんお留守番でも」
「危なくなったら、隠れます」
「……絶対だからね」
私は、笑って神様に勿論と返した。
神様と連れ立って私が訪れたのは、隣町の一件の古びたカフェだった。
神様曰く、ここでその投書の人と待ち合わせをしているらしい。
「今回は来てくれそう?」
「え、うーん。大丈夫だと思うけどなあ」
ぽやん、と頼りなくそう神様が呟いた時、今どきにしては珍しく、膝より少し眺めのプリーツスカートに白のリボンが生えるセーラー服を着た女の人が、私たちの元へ近づいてきた。
「あの、ルクラオ、の」
「ああ、新崎るうさん、ですね?」
新崎さんは、礼儀正しく頭を下げた。
「初めまして、貴方が神様、ですか?」
「そうです。今回は来てくださって有難うございました。折角で悪いんですけど、お話聞かせて頂けますか?」
戸惑ったような表情の新崎さんは、そこで漸く私たちの向かいに座り、辺りを少し見渡してから、声を潜めて話し始めた。
「……ここ1ヶ月くらいです。なんだか、夢現、と言えばいいんでしょうか。ふわふわしているんです。寝ているのか、起きているのか、これは夢の続きなのか、それとも現実なのか。……別に続けて夢を見ている、という訳ではなくて、なんというかこう……気がつくと、学校にいたり、気がつくと帰り道だったり、スーパーだったり、と。全てのことが断片的に繋がっているような、気がするんです」
そこまで話した神咲さんは、神様が頼んでいたミルクティーをストローで静かに啜った。
「……すみません、とても曖昧で」
「いえ、充分ですよ、話して下さってありがとうございます。もう、大丈夫ですから」
にこりと笑った神様に、新崎さんはえっ、と驚いた声を上げた。
「もう、いいんですか?」
「はい、大丈夫です」
「……原因、わかったんですか?」
「はい」
新崎さんは、そのまま何も言えずに手もとのコップに差さったストローをぐるぐると回した。
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