1 神様とわたし

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「最近夢と現実の狭間が、曖昧?」  私の怪訝そうな声に、神様はへにゃりと笑ってそうなんだあ、と力が入っていない声を出した。  洗濯物を畳んでいた手を止めて、神様の後ろから少し旧型のパソコンを覗きこんだ。 「この投書が、そうなの?」 「うん、微かだけど気配を確かに感じるんだ」 「……じゃあ、行くしかないよね」 「毎回そうだけど、胡羽ちゃんお留守番でも」 「危なくなったら、隠れます」 「……絶対だからね」  私は、笑って神様に勿論と返した。  神様と連れ立って私が訪れたのは、隣町の一件の古びたカフェだった。  神様曰く、ここでその投書の人と待ち合わせをしているらしい。 「今回は来てくれそう?」 「え、うーん。大丈夫だと思うけどなあ」  ぽやん、と頼りなくそう神様が呟いた時、今どきにしては珍しく、膝より少し眺めのプリーツスカートに白のリボンが生えるセーラー服を着た女の人が、私たちの元へ近づいてきた。 「あの、ルクラオ、の」 「ああ、新崎るうさん、ですね?」  新崎さんは、礼儀正しく頭を下げた。   「初めまして、貴方が神様、ですか?」 「そうです。今回は来てくださって有難うございました。折角で悪いんですけど、お話聞かせて頂けますか?」  戸惑ったような表情の新崎さんは、そこで漸く私たちの向かいに座り、辺りを少し見渡してから、声を潜めて話し始めた。 「……ここ1ヶ月くらいです。なんだか、夢現、と言えばいいんでしょうか。ふわふわしているんです。寝ているのか、起きているのか、これは夢の続きなのか、それとも現実なのか。……別に続けて夢を見ている、という訳ではなくて、なんというかこう……気がつくと、学校にいたり、気がつくと帰り道だったり、スーパーだったり、と。全てのことが断片的に繋がっているような、気がするんです」  そこまで話した神咲さんは、神様が頼んでいたミルクティーをストローで静かに啜った。 「……すみません、とても曖昧で」 「いえ、充分ですよ、話して下さってありがとうございます。もう、大丈夫ですから」  にこりと笑った神様に、新崎さんはえっ、と驚いた声を上げた。 「もう、いいんですか?」 「はい、大丈夫です」 「……原因、わかったんですか?」 「はい」  新崎さんは、そのまま何も言えずに手もとのコップに差さったストローをぐるぐると回した。
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