1 神様とわたし

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「……あ、の」  頼んだ飲み物を飲み終わったのを見計らい、私と神様はじゃあ、と席を立つ。  新崎さんも慌てて立ち上がり、カフェを出たところで、やはり気になると言った風にそう声を出した。 「なんでしょう?」 「あの……」 「新崎さん!」  どう言葉を続けたらいいかわからないのか、声を出したはいいけれどその続きが紡げていなかった新崎さんに、私は我慢できずに声をかけた。 「あの! 私に言われても、説得力ないかもしれないんですけど! でも、大丈夫ですから!」  新崎さんは、きょとんとした表情を浮かべて、私を見つめる。  そうだろうなあ、小学生の私にそんなことを言われたって、説得力も安心感もないだろう。  でも、言わなければならなかった。 「大丈夫です! だって、神様が大丈夫だって言うんだから!」  私のその言葉に、新崎さんは一つ間を置いて小さく笑った。 「ふふ、そうですね。だってルクラオは、私たちにとってのお守りみたいなものなんですから」  ありがとうございました、よろしくお願いします。  新崎さんはもう一度丁寧に頭を下げた後、ゆっくりと帰って行った。  背中が見えなくなるまで見つめていた私たちは、やがてゆっくり目を合わせる。 「したね、気配」 「うん、胡羽ちゃんもやっぱり感じた?」 「感じた。多分、この辺だよね」 「そう、この辺」  私と神様が向けた視線の先には、小さな公園があった。 ◇◆◇  昼間も閑散としていたその公園は、日が暮れるとより一層気味の悪さを増幅させていた。  きい、と誰も乗っていないブランコが音を立てて揺れる。  寂れた公園には、誰の姿も見受けられない。 「神様こっち!」  私の少し甲高い声が、静かな公園に響き渡る。  同時に聞こえる足音は二つ。 「……今日のはおっきいねえ」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ神様!」 「え、ああうん、そうだねえ」  そう言うと、神様はポケットからスマートフォンを取り出した。   「神様!」  私の声に呼応するかのように神様の前に現れたのは、赤黒い体躯の、巨大な怪物――「隠鬼(おに)」だった。
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