0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あ、の」
頼んだ飲み物を飲み終わったのを見計らい、私と神様はじゃあ、と席を立つ。
新崎さんも慌てて立ち上がり、カフェを出たところで、やはり気になると言った風にそう声を出した。
「なんでしょう?」
「あの……」
「新崎さん!」
どう言葉を続けたらいいかわからないのか、声を出したはいいけれどその続きが紡げていなかった新崎さんに、私は我慢できずに声をかけた。
「あの! 私に言われても、説得力ないかもしれないんですけど! でも、大丈夫ですから!」
新崎さんは、きょとんとした表情を浮かべて、私を見つめる。
そうだろうなあ、小学生の私にそんなことを言われたって、説得力も安心感もないだろう。
でも、言わなければならなかった。
「大丈夫です! だって、神様が大丈夫だって言うんだから!」
私のその言葉に、新崎さんは一つ間を置いて小さく笑った。
「ふふ、そうですね。だってルクラオは、私たちにとってのお守りみたいなものなんですから」
ありがとうございました、よろしくお願いします。
新崎さんはもう一度丁寧に頭を下げた後、ゆっくりと帰って行った。
背中が見えなくなるまで見つめていた私たちは、やがてゆっくり目を合わせる。
「したね、気配」
「うん、胡羽ちゃんもやっぱり感じた?」
「感じた。多分、この辺だよね」
「そう、この辺」
私と神様が向けた視線の先には、小さな公園があった。
◇◆◇
昼間も閑散としていたその公園は、日が暮れるとより一層気味の悪さを増幅させていた。
きい、と誰も乗っていないブランコが音を立てて揺れる。
寂れた公園には、誰の姿も見受けられない。
「神様こっち!」
私の少し甲高い声が、静かな公園に響き渡る。
同時に聞こえる足音は二つ。
「……今日のはおっきいねえ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ神様!」
「え、ああうん、そうだねえ」
そう言うと、神様はポケットからスマートフォンを取り出した。
「神様!」
私の声に呼応するかのように神様の前に現れたのは、赤黒い体躯の、巨大な怪物――「隠鬼(おに)」だった。
最初のコメントを投稿しよう!