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大学4年の3月。無事進路も決まり、卒業もできそうだ。
今日はゼミやサークルの先生や仲間に挨拶をしてきた。
だいぶ話し込んでしまい、家に着く頃にはすっかり日が落ちていた。
ドアを開け僕は「ただいま」と言って家に入る。
「おかえりー」
部屋の奥から聞こえる返事を聞きながらキッチンに行く。
電気をつけ、手を洗った。
そのまま部屋のテレビをつけようと思ったが、先日父親が持っていったことを思い出す。
部屋には段ボール箱や片付け途中の服や荷物が沢山ある。
今日中にまとめなければと思いつつ、まだ敷いてある布団に座る。
僕は就職のために引っ越すことを決めた。
今住んでいる場所も気に入ってはいるが働き先としては選ばなかった。
明日には父親が大きめの車を借りてこっちにきてくれると言ったな。
そのまま父に車に乗って引っ越しを済ませる。そこでこの部屋とはお別れだ。
僕はタブレットで音楽を流しながら、荷物をまとめることにした。
引っ越し当日。
僕は私物が完全にない部屋を見回して少し寂しさも感じた。
最初は慣れないことも多くて、別のとこに引っ越そうかとも考えた。
慣れてしまえばいい部屋だったと思える。相場より格安の割に綺麗で過ごしやすかった。
僕は4年間一人暮らしをしたこの部屋に
「ありがとう」と感謝を伝え、部屋を出る時に一言
「いってきます」
と言った。
「いってらっしゃい」
そう聞こえた気がした。
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