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「白石咲絵です。よろしくね」 パソコンの画面を見ながら挨拶は失礼だから、作業の手を止め、隣の席に座った黒崎くんに軽く会釈し挨拶をした。 黒崎雷疾…、カーネギメロン大学で人工知能開発について専門的な事を学んだエキスパートな人としか思ってなかった。 彼の名前をわたしの脳に一文字ずつ入力をすると、幼稚園から中学校を卒業するまで、わたしを負かしてた名前しか知らないライバルと気づく。 それに気づき、社報紙で顔は見て、カッコいい人だとは思ってた。 実際に、実物を見ると、本物の人間がと思ってしまうぐらいの美しい顔立ちに、カーネギメロン大学で作られたアンドロイドなのではと思ってしまった。 長身でバランスが取れた肉体美。 研究室にこもってパソコンにかじりついていたら、もっとひょろっとしていてもおかしく無いのに、スーツをかっこよく着こなす彼は適度に筋肉がついていて姿勢がいい。 「こちらこそ、よろしくお願いします」 彼は1度わたしの顔をじっと見て、そして笑みを浮かべた。 わたしが彼をまじまじ見てると思われると嫌だから、すぐにパソコンに目を向け、仕事の続きに取り掛かる。 その横で、30以上ある3月末が納期のロボットプログラムに、彼はすべてをさらっと目を通し、分類分けをし、パソコンに向かい、高速にキーを叩いていく。 考える時間などなく、ピアノを弾くようにパソコンにコードを入力していく。 思わず、仕事の手を止め、見惚れてしまった。
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