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「大丈夫。すぐに慣れますよ……」
彼女の陶酔にも似た瞳を見た時、私の胸に小さな、しかし確かな輪郭を持った炎が宿った。
震える手を伸ばし、その武器をキュッと握る。
私の首を締め上げる、窮屈なネクタイを弛めながら、ゆっくりと歩いた。
そして思う。
――時代は変わった。
教師が自衛ために武器を持つ時代になった。
そして彼らは、他人を打ち据えることに何の抵抗も持たなくなった。
(いつか……)
またきっと、時代は変わる。
武器を持った大人から、子どもたちを守る時代が来る。
その時のために……。
その時のために、私は今、武器を取る。
血のあぶくを吐き、呻くその男を見下ろして、一振りで『打人鞭』を展開する。
今はただ、目に涙を浮かべ、歯を食いしばって……。
「……!!」
私は血まみれの武器を大きく振り上げる。
今この瞬間は、流れに身を任せ、渦に飲まれたように思わせなければならない。
渾身の力を込めて、『打人鞭』を振り下ろす。
絶叫。そして、悶絶。
腕を組んで見ていた、彼女の口元が満足げに歪んだ。
――だが彼女は勘違いをしている。
これは従属でも屈服でも、断じてない。
(いつか、きっと…………!!)
これは、心に芽吹いた確かな叛意だ。
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